大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)1887号 判決

被告人 佐伯寛

〔抄 録〕

記録を精査し、かつ当審において事実取調をした結果をも加えて検討してみると、東京都港区長作成の佐伯寛及び柳原隼作、並びに松山市長作成の佐伯慶次及び佐伯保の各戸籍謄本に徴すれば、被告人は柳原隼作の三男であるが、昭和四年一月一二日右隼作の弟佐伯保の甥として引取入籍して佐伯姓となり、原判示第一の業務上横領の被害者である佐伯慶次は、北岡為慶の三男で、大正九年一月二九日佐伯保の養子となつて現在に及んでいることが明らかであるから、被告人と被害者とは法定血族四親等の親族であることには疑なく、また佐伯慶次の検察官に対する昭和三四年八月八日付供述調書の記載によれば、被告人は被害者佐伯慶次と同居中に同人所有の現金を業務上横領したものであることが明らかであつて、右は検察官所論引用の被告人の昭和三三年九月三〇日付司法警察員及び昭和三四年六月一七日付検察官に対する各供述調書の記載によつてもうかがい知られるところである。しからば原判示第一の業務上横領の事実については、同居の親族の間における犯行として刑法第二五五条第二四四条第一項前段によつてその刑を免除すべき場合に該当するものと認むべきであるから、原判決が、事ここに出でずして、右各法条を適用することなく右事実につき被告人を懲役六月に処したのは、まことに事実誤認又は法令の適用を誤つたものであつて、右誤は判決に影響を及ぼすものであるが故に、被告人、弁護人及び検察官の各論旨(ただし弁護人の所論中原判決が業務上横領罪につき被告人を徴役一〇月に処したとあるのは懲役六月の誤りである)はいずれも理由があつて原判決(ただし第一の業務上横領の事実について言い渡した部分)は破棄を免れない。

そこで刑事訴訟法第三九七条第一項によつて原判決のうち第一の罪(業務上横領の事実)について言い渡した部分を破棄し、同法第四〇〇条但書によつて更に判決をすることとする。

すなわち、原判示第一の事実を法律に照らすと、被告人の原判示所為は刑法第二五三条に該当するが、右は前説示に挙示した各証拠によつて明らかなごとく同居の親族の間における犯行と認められるので、同法第二五五条、第二四四条第一項前段に則つて右事実については、被告人に対してその刑を免除することとする。

(尾後貫 堀真 西村)

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